Scroll Top

犬のカラー因子について🧬マール遺伝子

カラー因子とマール遺伝子について

犬の毛色は、いくつかの遺伝子によって決まります。
それぞれの遺伝子が少しずつ違う働きを持ち、組み合わせによって黒・茶・赤・白・マールなどの美しい色が生まれます。それでは簡単に説明していきます。

🌈 カラー因子とは

代表的な遺伝子を簡単に紹介します👇

  • E遺伝子(Extension)
    → 黒や赤など、基本の色素(ユーメラニン・フェオメラニン)の発現を決めます。
  • A遺伝子(Agouti)
    → トライカラー、セーブル、ブラック&タンなど、模様の出方を作ります。
  • K遺伝子(K locus)
    → ブラック系の強さを決める。KBが強く働くと全身が黒になります。
  • B遺伝子(Brown)
    → 黒い色素をチョコ(ブラウン)に変える。
  • D遺伝子(Dilute)
    → 色を薄める遺伝子。ブルーやイザベラなどの淡い色を作ります。
  • S遺伝子(Spotting)
    → 白い斑点やパーティーカラーなどを生み出す白斑遺伝子。
  • M遺伝子(Merle)
    → 色素を部分的に薄くし、独特のまだら模様を作る遺伝子。今回のテーマです。

この「M遺伝子」があると、黒や赤の毛が部分的に薄くなり、ブルーグレーやシルバーに見えるのです。
代表的なのが「ブルーマール」や「レッドマール」です。

🧬 マール遺伝子とは?

マールは「M遺伝子」と呼ばれるもので、正式には PMEL遺伝子(Premelanosome Protein) の変異によって生まれます。
この遺伝子は、毛や皮膚、瞳などの色を作る「メラノソーム」という小さな器官の働きを部分的に抑える性質を持っています。

そのため、毛の一部が薄く抜けたように見えて「マール模様」ができるのです。
マールは「染色体を欠損させる」と表現されることがありますが、これは誤り。
実際には、メラノソームの働き方を変える遺伝子であって、染色体自体を壊すものではありません。

SNSなどで「マールは病気になる」「マールは危ない」と言われることがありますが、それは一部の誤解です。

  • マール同士を掛けた場合(ダブルマール)に、耳や目に異常を持つ子が生まれることがある
  • マール × ソリッド(マールを持たない子) なら、健康上の問題はほとんどありません

つまり、マールそのものが危険なのではなく、「マールのかけ合わせ方」に注意が必要ということです。

マール遺伝子の影響は 色素細胞(メラノサイト) に限られる。
したがってリスクは主に感覚器官に関連する。

  • ✅ 内耳 → 難聴(Strain, 1999)
  • ✅ 眼 → 小眼球症・虹彩異常
  • ⚠️ 神経 → ごくまれにMM個体で報告
  • ❌ 臓器(心臓・肝臓・腎臓) → 科学的関連なし

2018年、近年の研究では、マールにもいくつかのバリエーションがあることがわかっています。
模様の濃さや白斑の出方は、マール遺伝子のタイプによって違います。

  • クラシックマール(M):一般的なブルーマールやレッドマール。
  • ハーレクインマール(Mh):白斑が多く、派手で印象的なタイプ。
  • アティピカルマール(Ma):淡い・不明瞭なマール模様。
  • クリプティックマール(Mc):見た目ではマールに見えない“隠れマール”。

この違いは、PMEL遺伝子に挿入されたDNA配列(SINE)の長さの違いで起きます。
見た目では判別が難しいため、現在では遺伝子検査が繁殖時の必須項目となっています。

🧬健康への影響について

マール遺伝子が影響を与えるのは、あくまで「色素細胞(メラノサイト)」です。
メラノサイトは皮膚・毛・虹彩(目)・内耳などに存在する細胞で、
ここに異常が起きると、次のような症状が現れることがあります。

  • 内耳のメラノサイトが欠ける → 先天性の難聴
  • 眼のメラノサイトの形成不全 → 虹彩異常や視力低下

つまり、マールが影響するのは主に 耳と眼 です。
心臓や肝臓などの内臓疾患との関係は科学的に確認されていません。

この点は多くの誤解がある部分ですが、
「マールは内臓疾患を起こす」「臓器が欠損する」という説には、エビデンスは存在しません

危険なのはマールそのものではなく「組み合わせ」

問題になるのは、マール同士(Mm × Mm)を交配した場合
この組み合わせでは、25%の確率で「ダブルマール(MM)」と呼ばれる個体が生まれ、
白毛が多く、難聴や視覚障害を持つ可能性が高くなります。

一方、マール × ソリッド(マールを持たない子=mm) の場合は、
ダブルマールは生まれず、健康なマールの子犬が誕生します。

つまり、「マールは危険」ではなく、
「マールを正しく理解して繁殖しないと危険」なのです。

見た目はソリッドに見えても、遺伝子検査をすると実はマール(Mc)だった、というケースがあります。
この“隠れマール”同士をかけてしまうと、結果的に「マール同士の交配」となってしまい、リスクが発生します。
そのため、遺伝子検査で確実にmm(ノンマール)であることを確認してから繁殖を行うことが非常に重要です。

🌿 まとめ

  • マールはPMEL遺伝子の変異による、美しいまだら模様を作るカラー因子
  • 健康への影響は主に「耳と眼」。内臓疾患とは無関係
  • 問題は「マール同士の交配」であり、マールそのものが危険なわけではない
  • 遺伝子検査で確認し、正しい組み合わせ(Mm × mm)を行えば安全

マールは、遺伝をきちんと理解したうえで扱えば、
健康で美しく、個性的な魅力を持つ素晴らしいカラーです。
誤解や偏見ではなく、科学と責任ある繁殖管理のもとで守っていきたい毛色だと思います。

2018年のマール最新文献を見ても、内臓疾患等の発現には触れられておりません。

つまり、障害が発生する場合は生まれ持って発現しており、後天的に発現する場合は他の要因を考えたほうが良いかもしれません。

海外直輸入、血統にこだわるブリーダー直販サイト Wheatcollie&Bellissimo
幼いころから犬が大好きな私は、血統を重視して、丈夫さと、性格の良さ、そして外見の可愛さを兼ね備えたハイクオリティのブリーディングにこだわり、仔犬を育てています。育てているのは、空気の綺麗な八ヶ岳の麓。仔犬にとっては最高の環境です。世界中から妥協せず健康な親犬を選び、体調や適性に応じた質の高いフードを提供し、病気リスクを最小限に抑える努力をしています。気に入っていただけたら、是非一度、見学にいらしてください。
WheatCollie&Bellissimo 代表 田中結花